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「明恵、夢に生きる」河合隼雄 など [話しておきたい]

●「明恵、夢に生きる」河合隼雄著 夢分析と言うとフロイトの執拗なセクシャルな分析(夢判断)に辟易としてずいぶん前から流していたが、今、義経で注目される鎌倉初期に明恵という僧侶が自分の見た夢を19歳から死ぬまで記録して主体的かつ「合理的」に付き合っていたという(このあいだ、夢の本を紹介する本に載っていて知った)。最近ミーハーだけど信頼寄せる著者の本だし読んでみた。夢については思い返せば平安の日記物にもよく出てくるし、当時の人には馴染み深いものではあったろう。が、何せ「克明すぎても無意識が意識的な制御を超えて危険に陥りやすい(自我肥大が生じやすい)」のでその分析はたいへん困難なもので、それゆえ明恵の「夢記」は世界精神史でも稀有のものであるらしい。

◇著者は、夢を「合理主義によって武装された自我は強力だがそれは一面的存在に過ぎず、常にその成長を願う存在(無意識)からのメッセージを睡眠中の自我がそれなりに意識化したもの」と考え、その内容を自我を越えて、自分の盲点と何らかの意味で関わるものであるとみて意味を引き出すもので、単純にそれを信じるものでもないから、強力な合理性と、それを越えてかつ非合理の世界と向き合う姿勢を持つことが必要と言う(p.43-44)。例えば、身体切断のイメージは人間の人格の発展の過程を(切るは父性原理(西洋)、包むは母性原理(日本 妻をおかあちゃんと呼ぶ)が関連していると考えられる、明恵は自分で右耳を切り落としたりしている)、歯が抜けるのは咀嚼・つまり解釈の変更を求められているのだという。「相応等起」や「華厳思想」とか。。。いや容易でない。

◇明恵は物事の両面性をよく見極める姿勢があった。例えば、修行にも多くの人と騒がしくて邪魔だてされるが、一方山中に一人でいるのも知らず知らず時間にゆとりがあって怠ってしまう危険性があると指摘したり、一休みするにも精神を集中してイメージの世界に入っていくのと、ただ願望に動かされて空想している違いを指摘している(耳が痛い)。一方に偏らないためには心に必要な余裕・ユーモアも備えていた。なお、明恵はまた北条泰時の「貞永式目」(御成敗式目)の制定に深く関与して、著者は、それは武家時代600年を通じて日本人の秩序意識に大きな影響を与えたから彼は日本の思想においても重要な人物だったと指摘し、さらにその影響を受け入れて育まれた日本人の国民性については、余談的だが、「倫理的な面では礼や戒を受け入れなかったが、芸術の世界では一種の補償作用のように極端に細かく厳しい礼や戒を重んじた文化性があったのではないか」という中根千枝氏の言を引用している。これはこれで、芸術の世界に限らず、様式美・形式美は世界的な高い評価を得ながら、思想・精神面においてはバラエティを得にくく、貧相、かつ形骸化を引き起こし易い現在の状況を鑑みると興味深い!*夢判断については、googleでこんなサイトもあったので見てみた。http://members.aol.com/lilylove28345/dream1.htm

明恵 夢を生きる

明恵 夢を生きる

  • 作者: 河合 隼雄
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1995/10
  • メディア: 文庫

●「カルマと再生 生と死の謎を解く」本山博著 とうとう大御所(国際的超心理学者)の著書。数年前であれば恐ろしくて手にできなかったのだが江原啓之氏もTVで活躍するようになった時代の流れか。意思的に行った行為の果・カルマの種子が体のあるチャクラに貯えられ承継されるというほか、その条件・メカニズムなどあまりに説明が具体的でおどろおどろしい(それほどカルマは厳しいのだという)。知りたいのは何のために人間は輪廻転生するか(←もう既にあるのが前提。そして再生の目的はは霊的成長の必然性のため)。アストラル界を越えたカラーナ界が仏教の阿頼耶識界にあたる。おそるべきは無明、食欲・性欲・感情・想念・恐怖、そして愛情・智慧でさえも引き起こす「心の執らわれの状態」。そして、行為の結果を求めない(行為させていただく、自分はそれを一生懸命させていただくだけ、自分にとっては結果が良くても悪くても受け入れるべき)「超作」によってのみカルマを超えられるのだという。言うは易し行うは難しだが一日のうち1つでもやるんだそうだ。ほぉ。

カルマと再生―生と死の謎を解く

カルマと再生―生と死の謎を解く

  • 作者: 本山 博
  • 出版社/メーカー: 宗教心理出版
  • 発売日: 1987/09
  • メディア: 単行本


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