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「日本アルプスの登山と探検」ウェストン [本のこと]

◇やっと晴れたけれど、 週初めから天気のせいかテンション上がらず、新潟の山の疲れかなぁ。自分が思っているほど若くないのかもしれない・・・昨日、健康診断に行ったら呼吸数が毎分10回前後と極めて少ないらしい。秋半ばにして早くも冬眠体質が現れたのか。体重は減ってきている。忙しくなりそうだから防衛本能かも。◇夕方、図書館に行って、夜は自然食品店の模様替えをお手伝いした。夜はヨモギ風呂に入って読書。天気好転とともに動ける。

◆さて、読み溜めている本の感想をつらつらと。「日本アルプスの登山と探検」 岩波文庫 ウェストン(著), 青木 枝朗 1896年刊:日本の近代登山の古典。「日本アルプスを世界に紹介して,日本アルプスの父といわれるイギリス人登山家ウェストン(1861-1940)の日本滞在中の登山記録.槍ヶ岳,乗鞍岳,立山,穂高岳,御岳などへの登山や周辺地域の民俗がユーモアにみちた文章でつづる。日本の登山の先駆者たちもこの書物によって近代登山に開眼したという.」 ウェストン初著。コンウェイ卿<英山岳会会長>の縦走主義登山("the alps from end to end" =65日 100マイル 従来の放射線状登山に対するもの)  の影響を受けたか。すでに読んだ同系統の本2冊を考えるとこの本を最初に読むべきだったかもしれないが、間違った英文広告など 面白可笑しく誇張されながらも、とにかく、「近代化・西洋化」された者(つまり現代日本)の観点から100年前の日本の描写が面白りゃーて。つまり、「子供のように 自意識に欠ける」日本人の陽気な異常なおしゃべり。「時は、お金ほど評価されていないので正確と迅速を期待してはいけない」宅配郵便。足を汚しているのに 見舞いの礼にベッドに正座する老婆。火箸で炭火をつまみ上げて 無表情に自分の足の傷にジュッと傷口に押し付ける人力車夫。「人々は裕福そうに見えなかったが、礼によって極めて礼儀正しく、はるばるやってきた甲斐があるような気がした」(糸魚川にて)と、 ウェストンはこの文明化されていない日本の山間の人々について、君子・紳士の国の美称がまことに適切であると、とても気に入っていたらしく、何度も繰り返して記している。産業革命で殺伐として、西洋にすでに消失した情緒を懐かしんだのかもしれない。◇中でも、前宣教師という経歴からか宗教習俗について興味を示している。中国 インドの流れを引く、巡礼登山の代表として木曽御嶽を興味深いものとして挙げているが、「日本人はほとんど例外なく山の中腹や谷間の最も美しいところに神道の社殿などの礼拝の場所を人間と超越的なものが出会う場所として選び」、滝行する巡礼を篤信の人と見て 旧約聖書詩篇 「誰か神の丘を登らん」のダビデの言葉を思い出す。僕も今夏、御嶽山中でイギリスの軍人だという 一行に逢ったが、今でも外国人(イギリス人?)に人気があるらしい。僕らがチベットの鳥葬をみるかのごとき興味なんであろうか。その他にも、「眠っている人無理に起こすことを忌む (魂が外に出ているので 急に起こすと障るから)」習慣、密教の「奇妙な儀式」について 空海の教義とヨガの体系の類似性(宇宙に遍在する霊と 忘我のうちに交わる)を、「規則に従って習得される自己催眠の方法による精神的向上」と20C初頭の人らしい解説をしている。狐つきなどの現象について、 ウェスコット僧正「原始的な悪魔崇拝の中にすら、人は友好的な関係を維持したい性質があるだろう」一定の距離を置きながら理解を示し?つつ、降神会(セアンス)も見学してその有様にキリスト教徒として 疑問を呈している。それにしてもイギリスの神霊学はそのころから大いに発展しているらしいのだが。思うに、現代はその西欧でも当時のキリスト教至上ではすでになくなった 昨年、「どうも仏教の方が優れているらしいことに多くの人が気づいている。」とも聞いた。100年後、私たちの今の知見はどう評されるのだろう。◇さて、ウェストン個人の活動の背景について、青木枝朗氏がわかりやすく解説されている。いわく、「17C以来、上流階級の子弟教育の仕上げとして大陸旅行に出す習慣があり、イタリアの風光明媚さ・ローマ遺跡の壮大さと並んでアルプスの雄大な景観が最大の収穫とされ、それに端を発スイスアルプスにおけるイギリス人の登山活動が始まった。そして19C、 ワーズワース バイロン シェリーといったロマン派詩人が歌い上げ、産業革命で台頭した中産階級が続き、アルプスの主峰39座のうちマッターホルン以下31座がイギリス人によって初登されるまでになった。ウェストンはマッターホルンに登り、アイガー・ユングフラウに失敗後(後に成功)、1888年 キリスト教教会の宣教に来日したが 日本の中部山岳地域に魅せられ、宣教師を辞して山への探検に取り組むことになったというわけである。

日本アルプスの登山と探検

日本アルプスの登山と探検

  • 作者: 青木 枝朗, ウェストン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1997/06
  • メディア: 文庫
  •  兵庫 能福寺大仏 (本書より)
  • 兵庫の大仏つぁんとして内外に親しまれたが戦時中金属供出令により、解体された。眉間に照明が埋め込まれ、そのアイデアをウェストンが和洋折衷として讃している。

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