SSブログ

「山の自然学」「日本の山はなぜ美しい [本のこと]

◇昨日は新宿で業務報告後、錦糸町で尺八レッスン。個人レッスンとなって、かつ「あんたのバラード」「GIRL」「あずさ2号」と快調に飛ばした。J・レノン「I WANT YOU」の奥深さに感動。それからちんたら築地に出て もりさかさんと面会。僕も多少出資している会社が伸び盛りとか。今後お仕事かも。ふじい さんも合わせて焼き鳥でいっぱい。いいなーこういうの。

◆さて小泉 武栄さんもの2冊。「山の自然学」 日本の山って!  コマクサと砂礫地。山の自然学とは植物分布や地形・地質・動植物・昆虫など全部ひっくるめてあるがままに把握しようという欲張った楽しい学問分野! 個別の学問分野では全てを説明不足になりがち。 北から南まで特徴ある各地域の山々をとりあげて登山路から見える風景・植物を解説した自然学入門。「日本の山はなぜ美しい」。日本の山はこんなに多彩で面白い! 
1 氷河時代の植物群― 礼文島 1万年前までの氷河期。東ヌプカウシヌプリ(十勝平野北外れ)生態系全体が氷河期の生き残りと見られる。そうした残存(レリック)は房総半島や五日市、鳥取でも見られる。氷河時代といっても温帯や熱帯ではそれほど寒くなかった。 
2 火山と永久凍土―大雪山 溶岩台地 日本最大の高山帯 風衝草原 永久凍土20m と活動層  地面の模様・構造土・亀甲土 融解湖
3 端正な氷河地形と豊かな高山植物―日高山脈 太平洋側で(かつ日本海が湖で)積雪少なくカール発達せず。お花畑が美しい幌尻岳・戸蔦別岳 崖錐。
4 ブナ林が貴重である理由―白神山地・真昼山地 サハリンなき後の伐採 3千年前の林だが、北米・欧州では大陸氷河の拡大による消滅で植物相が単純になり、原型をとどめる貴重な林になった。地すべり地に独特の植物も。
森林限界がなぜ低いか―早池峰山 かんらん岩の基盤が氷河時代に凍結破砕されてできた「岩塊斜面」のせい。下限が1300mまであって針葉樹が入り込めない。「垂直分布帯」600mまで常緑広葉樹林帯(カシ・シイ)。1600mまで「落葉広葉樹林帯」(ブナ・ミズナラ)。針葉樹林帯(シラビソ・オオシラビソ・コメツガ)。森林限界・高山帯・ハイマツ帯(珍しい ホシガラスのおかげ?)。日本アルプスの森林限界はアフリカと並んで1000m以上低い。かんらん岩と蛇紋岩(アルカリ性強い)は特異な植物が分布する(エーデルワイス・ハヤチネウスユキソウ)。さらに積雪少なく高茎草原(トリカブトなど)も。至仏山の粘土質性。6 コマクサと樹林と湿原と―岩手山・八幡平 火山性砂礫地が1300mまで。焼け走り溶岩流 雪窪 千沼ケ原 湿原環境(多雪 泥炭 湿潤) 4/8/12千年前に堆積が始まっているのは日本海の海況によるものか。7 残雪そして偽高山帯―月山・飯豊山・鳥海山 残雪のある山は少数。世界一の多雪・強風。雪庇・雪崩。氷河とは違う万年雪。残雪は植生や地形にさまざまな影響を与える。消雪とチシマザサ。砂礫地は雪窪へ。亜高山の針葉樹がなく低木が優占して景観上高山帯によく似る。9-4千年前に一度針葉樹は絶滅し、その後復活したが多雪山地では遅れた。8 雪崩がつくる滑り台―谷川岳・御神楽岳・越後三山 クラ・嵓 アバランチシュート 岩屑がヤスリに。風化に強い硬い岩石。石英閃緑岩。中盤に断層が。
9 湿原と自然保護―尾瀬ヶ原・戦場ヶ原 ミズバショウ 湿原前は沖積低地だったが8千年前から雪が増えて泥炭が堆積し始めた。現在厚い所で5-6m。拠水林。電源開発の危機。乾燥化危機。9 風食地形と植物相―平標山・羽後朝日岳 強風が作り出す風食地形 世界的にとても珍しい ジェット気流の収斂 階段状 パッチ状 植生の遷移。 11 特異な地形が生み出す植物群 妙義山。清澄山 数百年前に噴出した火山の堆積物(火山角礫岩 凝灰角礫岩 安山岩質溶岩) 水流には弱いが風に強い。変わった植物の分布も。ヒメコマツ。12 丹沢山・三頭山 湘南排気ガス・酸性雨か。若木が育たない。温暖な気候に育たないのか。13 新しい火山のために 富士山・浅間山 火山活動は5-6千年前からで中止・侵食はまだ1000年たらず。針葉樹林帯は300年ほど。貧栄養ゆえに大きく育たない。溶岩樹型。スラッシュ雪崩。1707年宝永山。1783年浅間山大噴火。鬼押し出しの溶岩上でもやっと植生が。 14 縞枯れ現象の不思議 八ヶ岳 南・北(天狗)・南(硫黄岳)・北(横)の順 小雪でトウヒ属を残存させている 枯れ・日光・土壌乾燥で帯が上昇(年に1.7m) 土地の安定条件も 大菩薩嶺 岩塊斜面に針葉樹林(ネズコ)成立。15 二重になった山稜 雪倉岳 中小の断層を境にして山体がずれることによってできる。線状凹地・舟窪。氷河の消滅も原因か。植皮階上土。粘板岩。蝶ケ岳・間ノ岳。16 高山植物の女王コマクサ 白馬岳・蓮華岳 白い色をした乾燥した砂礫地 流紋岩 凍結破砕作用と風化しやすい性質 条線土 草地と礫地のサイクル コマクサは東北日本では新しい火山に限られる カムチャッカ・千島がルーツか。 17 強風 多雪 大雪渓 剣岳 立山 薬師岳 氷帽 氷食尖鋒 窓(鞍部)とU字谷 モレーンの丘 カール(圏谷) ルントヘッカー モレーン(堆積物の丘) 18 崖錐の植物 穂高岳・槍ヶ岳 上部の岩から崩落してきた岩屑が堆積 安息角35度 植物は簡単に根をはれない 鋭く尖ったやせた尾根(アレート) 5-6万年前の氷期の侵食の強さ(一ノ俣、二ノ俣)19 川が作った森林 上高地 河童橋から上流のケショウヤナギなどの広葉樹は破壊の繰り返しによって維持される 岳沢出合のカラマツの大木 対して砂防ダムの建設 20 岩石の割れ目とお花畑 中ア ヒメウスユキソウは木曽駒の固有種 巨大な岩塊かズタズタの砂礫か=岩石の節理密度 南だけのタカネヒカゲ 21 お花畑が見事な理由 南ア 稜線付近の丈の低い乾性のお花畑(風衝草原)と森林限界以下の亜高山帯や高山帯の風下の草丈の高いやや湿性のお花畑(高茎草原) キタダケソウ 花崗岩とは別に、四万十層群(堆積岩 砂岩 泥岩 頁岩 粘板岩 チャートと変成岩 結晶片岩 緑泥片岩 千枚岩) 移動して交じり合うと表土が安定して通気性・保水性が良くなる 温暖化によって針葉樹の増進も 石灰岩(1億3千年前の南太平洋のサンゴ礁)の八本歯コル オベリスク 花崗岩は風化しやすい 割れ目が1mの間隔で入る 22 大地の造形=構造土 白山 地表面にある砂礫が凍結・融解の繰り返しによる古いわけを受けて作り出される 本場は北極圏のツンドラ 残雪地跡にできるうろこ状の植皮階状土と、強風地にできるソリフラクションローブ アースハンモック(まんじゅう型 芝塚)階上土 23 江戸時代からの花の名所 鈴鹿山脈 伊吹山 本州の最も幅の狭いところで通路になり易く豊かな植物相 石灰岩 多雪 24 四国山脈の森林と高山植物 石鎚山 東赤石山 南限の亜高山針葉樹林帯 石鎚山が最後 日本海型のブナ林(多雪多雨で林床が乾燥しない cf.天城山) 氷期に避難か。cf.大山  銅山越えのツガザクラ 亜高山帯のない山 屋久島と九州 桜島などの巨大噴火 祖母山などの巨大な花崗岩の山 阿蘇の広々とした草原 縄文前期の温暖期に針葉樹衰退か あとがき 自然の仕組み

山の自然学

山の自然学

  • 作者: 小泉 武栄
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1998/01
  • メディア: 新書

 ◆「日本の山はなぜ美しい―山の自然学への招待」小泉 武栄 (著) 「山の自然学入門」の姉妹編。山は人を生き生きさせ、謙虚にさせる。
第1部 高山帯の多様性 1 高山帯との出会い 雪倉岳 「日本山岳研究」(今西錦司)「日本アルプスの自然」の山岳学 2 高山帯の自然景観 木曽駒 レバノン山脈との共通 アンデス山脈 ヨーロッパアルプス(石灰岩) アラスカ チベット・崑崙山脈 ハリスゲ 永久凍土 ヒマラヤ。日本アルプスのようなさまざまな植物群落や地形が同じ高度にモザイク上に表れる山地はない。3 高山帯とは何を指すのか ハイマツ帯は亜高山帯へ。クルムホルツ帯(低木帯)や高山帯でなく。ハイマツ群落は千島・カムチャッカから、強風や多雪・岩塊斜面にも適応できるよう独自の発達をしてきたのかもしれない。~4 木曾駒ヶ岳のモザイク状の自然景観は、どのようにしてできあがったか フンボルトの南米での研究 季節変化がないペルー・ボリビアなどの場所では成帯性の乱れは起こりにくい ∽気温 積雪分布と融雪パターン 山頂現象と強風 第2部 高山帯のダイナミズム 5 寒冷地形談話会 6 第二のテーマ、地質と植物の関係を追って 両者は単純でないが、対応する すなわち岩屑の移動と植物群落 小礫やマトリックス(砂や泥の充填物質)を豊富に含むと凍土とソリフラクションの作用を受けやすくするが、根を張りやすい 7 ふたたび木曾山脈へ 山の地質とプレートテクニクス フォッサマグナはプレートの境界 節理(割れ目)密度の高いところで岩屑生産が行われている 岩塊斜面は斜面物質を安定させ、花崗岩の風化してできた砂礫・土壌が岩塊の隙間に詰まり、それがハイマツの発芽の場を提供した。全国各地の山を調べる 第3部 高山帯の自然史 9 高山帯の斜面発達と植物群落 山地斜面の形成期 風化皮膜7mm 薬師岳 白馬三国境 10 山の研究と自然史、そして自然保護 氷河時代や気候変化の影響は予想以上に残っている 第四紀(200万年前から現在まで) 年に2mmの隆起で100万年 隆起に残されたものが盆地に(松本・奈良) 落ち武者のように北極からさまよってきた高山植物 工事のための工事!? 自然についての関心 金権体質 レンジャー コマクサは氷河時代を背景にした一種の化石植物 地味で迫力にっ欠けるかもしれないが、垂直分布帯がよく発達しているし、谷には水が豊富 植物相・植物群落が豊か 複雑 決め細やかさなどの伝統的な自然観も 年較差の大きい気候 新規の造山運動による、凍結融解作用で岩屑を供給したり、安定した粗大な岩塊斜面を作り出す。

日本の山はなぜ美しい―山の自然学への招待

日本の山はなぜ美しい―山の自然学への招待

  • 作者: 小泉 武栄
  • 出版社/メーカー: 古今書院 発売日: 1993/09


nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

nice!の受付は締め切りました

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント